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期間:
2023.05.15 学会発表・論文

MIMOSYS®を用いて婦人科がんの患者様の軽度抑うつ症状を予測する機械学習モデルの有用性が、京都大学大学院医学研究科 婦人科学産科学の研究チームにより日本産科婦人科学会学術講演会のInternational Session Workshopで発表されました

この度、音声未病分析技術「MIMOSYS®」を用いて婦人科系がんの患者様の軽度抑うつ症状を高精度で予測する機械学習モデルに関する発表が、2023年5月12日~14日で開催された第75 回日本産科婦人科学会学術講演会において、京都大学大学院医学研究科 婦人科学産科学(以下、京大婦人科産科)の婦人科腫瘍研究チームにより、JSOG Congress Encouragement Award候補演題として口演されました。
 
本発表の演題名は、「Usefulness of Voice-based Mental-health Evaluation System in Patients with Gynecological Cancer」で、治療前から軽度抑うつ症状を有する婦人科がんの患者様は、化学療法中まで抑うつ症状が持続しやすいことがわかりました。そのモニタリングとしてMIMOSYS®をベースにした軽度抑うつ症状判別を行う機械学習モデルが有用であることを示唆する研究報告となります。東山 医師らの報告によると、MIMOSYS®をベースにした機械学習モデルは、質問紙票検査PHQ-9に基づく軽度抑うつ症状をAUC 0.88、Accuracy 0.8という高精度で判別しました。また、本機械学習モデルは、抑うつに関連する代謝経路を含む様々な代謝物の動態との関連性を示しました。

日本産科婦人科学会は、産科学及び婦人科学の進歩・発展を図りもって人類・社会の福祉に貢献することを目標とする、日本最大の産科学・婦人科学の学術団体です。そのような権威ある学会の学術講演会において、JSOG Congress Encouragement Award候補演題としてMIMOSYS®を用いた研究成果が口演されたことは、音声が抑うつ症状に関する新しいバイオマーカーとして医学界に認識されつつあることを示しました。

本研究は、弊社PSTが京大婦人科産科様と実施中の婦人科がん患者様を対象としたQOLの維持・向上を目的する共同研究の一部となります。今後、京大婦人科産科様の婦人科腫瘍研究チームの先生方の論文化へ向け、また婦人科系がんの患者様のがんサバイバーシップケアの発展のため、PSTは本研究のサポートを継続してまいります。
 

【MIMOSYS®について】
MIMOSYS®(Mind Monitoring System)とは、声帯の変化(不随意反応)を含めた音声解析により、心の状態を「可視化」する未病音声分析技術です。東京大学大学院工学系研究科 特任教授 徳野慎一先生によって医学的に検証され、言葉、国籍、性別、年齢、個人差の影響を受けることなく、日常の声から客観的かつ手軽に心の健康度をチェックすることができます。

【本研究の背景】
近年、がんの治療の目的として、がんを治すだけではなく患者のQuality of Life (QOL)を向上もしくは維持させ、精神的・社会的な日常生活を改善することが求められており、「がんサバイバーシップ」と呼ばれています。「がんサバイバーシップ」は日常生活に即した問題であることから、病院を受診した際の診察、検査のみならず、日常生活情報等の健康データをいかに診療に取り入れるかという課題がありました。それを受けて本研究においては、客観的かつ簡便な精神状態の定量化技術として、PSTの「VOISFIA®」および「MIMOSYS®」を導入することとなりました。
本研究の成果は、婦人科がん患者のヘルスケアサポート(QOL向上)、がんサバイバーシップに関する医学・医療の今後の発展に寄与することを目指します。

【本研究について】
京大医学研究科の万代昌紀教授、山口建講師を中心とした研究チームで実施される本研究は、京都大学医学部附属病院の産科婦人科やその関連施設で診断、治療、経過観察を行う18歳以上の婦人科がん患者様を研究対象者とし、治療および本研究への参加にあたり説明を受けた後、理解の上、文書同意が得られた方を対象に行われます。

【京都大学大学院医学研究科 婦人科学産科学教室について】
1899年に京都帝国大学医科大学が開設され、婦人科学・産科学教室(当教室)が創設、2019年で120周年を迎えました。現在の第10代教授である万代昌紀教授にいたるまで、当教室は婦人科がんと深くかかわってきた歴史があります。特に子宮頸癌は第2代高山尚平教授が発表した高山術式は子宮頸癌に対する広汎子宮全摘術の基礎となり、第3代岡林秀一教授が改良した岡林術式は現在の子宮頸癌手術の標準術式となっています。第4代の三林隆吉教授は超広汎子宮全摘術を考案しました。第8代の藤井信吾教授は子宮頸癌に対して出血量の少ない膀胱神経温存術式を考案し、現教授の万代昌紀教授は本邦で先駆けて鏡視下広汎子宮全摘術を行っています。また、子宮頸癌以外にも免疫療法の基礎研究から卵巣癌に対する抗PD1抗体の医師主導治験、がんゲノム解析、婦人科がんの発生や抗がん剤耐性の解明、がんとQOLの研究など、時代のニーズとともに将来の展望を心掛けた研究をしています。
URL:https://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~obgy/labo/st_g018.html